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新連載 [日記のような小説]

「いいえ、翠ママ、私たちはナデシコに感謝しているんですよ」
「何故、あの子達に感謝なさるの、よろしかったらお話してくださらない」
聞いたのは聡子だった。
「聞いてくれますか、そうね、お姉ちゃんは弁護士さんだから私たちの話を聞いておくのも何かの参考になるわね」
「まだ研修生です」
「でも弁護士さんにおなりになるんでしょう」
「そのつもりです」
「それならおなじことよ、ねえ」
仲間の定子に同意を求めてから沙織は話し始めた。
「こんな生き方をしている私たちだけど感じることも、思うこともあるでしょう、東大を出た人も私たちも選挙権は一票でしょう」
「そのとおりよ」
「つまり、だいたいのところは平等ということよね、同じ人間だから」
「そうね」
「だから、女のくせに男の言葉をしゃべったり、変な言葉を作り出したり、勉強も料理も出来ないくせに短いスカートをはいて、どこでもべたべた座って、仲間を虐めて、感謝の気持ちはなく、ウメーとか私そう言う人なの、なんて誰のことだかわからないことを言うし、カーテンかスカーフのような服を着て歩いてる、頭も軽いし、尻も軽い、そんなのを見ると腹が立つの」
「かなりの部分は私も同感」
「でしょう、でも、私たちオカマが言っても聴いてくれる人はいないわ、どうせオカマじゃないかと思っているから・・・
だけどナデシコが私たちのいいたいことを見せてくれているのよ、わかります、私の言うこと」
「わかります」
「この喜楽の周辺ではミニの女の子がいなくなったのよ」
定子が口を挟む。
こずえもうなずく。
「一般的にもだいぶ減ったみたいね」
「そうなのよ、お姉ちゃん、ナデシコは凄いわ」
「政府もそうだけどこの国は一度始めると止められないでしょう、誰がやってるっているってことなしに高校生はスカートを短くしているのよ」
「あのだらしない靴下はどこへ行ったのかしら」
「携帯電話に何十万も払った人達は今何をしているの」
「そんなもやもやしたものをナデシコは吹き飛ばしてくれるの、ねえ、そうでしょう」
「そうよ、あの三人、香苗さん、明美さん、翠ちゃんは女の子らしくて、勇気があって、優しくて・・・礼儀正しい」
「だからナデシコの応援は言って見れば私たちの自己主張よね」
「それはいえる、やっぱり志織さんは大学を出ているから言うことが違うわ」
「やあねえ、中退ですよ」
「あなた達の声嗄れにはそんな意味があったの」
「勿論、ナデシコが好きだからですけどね」
「随分あの子達も社会的なのね」
聡子は感心したように朝永を見た。
「自覚してないところがいいね」
朝永はそう言った。
「翠はそうでしょうけど、あなた達は違うでしょう」
「誰のこと?」
「マー君のパパと苑長さんとあなた」
「酔ったみたいだね」
朝永はそう言って聡子の追求をかわした。
「でも機長さん、今度は大人が相手でしょう、なでしこ大丈夫かしら?」
「都築さんは無理をしない人だから」
「三年生になった紅葉台が何を見せてくれるか楽しみだわ、いまから想像するだけでぞくぞくする」
「ねえ、ねえ、ここで乾杯しましょうよ、いいでしょうママ、紅葉台の活躍を祝って、ねっ!」
志織がいうとあちこちから賛同の声が上がった。
「私たちもくわえてよ、志織ちゃん」
そんな声に拍手が起きた。
「それでは皆さん紅葉台サッカー部とナデシコの活躍を祈ってご唱和をお願いします」
グラスを持って立ち上がった志織の音頭で乾杯が繰り返された。


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新連載 [日記のような小説]

「あら!」
迎えに出た「女の子」の驚きは叫び声に近かった。
同じトーンで奥に向って叫んだ。
「ママ!
翠ちゃんのパパとママよ、機長さんとお姉ちゃんもご一緒」
店の中の空気が微妙に動いた、その中をにこずえが小走りにやって来る。
「まあ、皆さまお揃いで、いらっしゃいませ」
と丁寧に頭を下げる。
「お世話になります」
恵里子が変な挨拶をした。
「こちらへどうぞ」
こずえが先に立って案内する。
店の中に顔見知りがいるのか朝永は時々客に会釈している。
こうして奥の席に着いた。
こずえが改めて挨拶をすると恵里子は楽しそうな好い雰囲気のお店ねと言った後に続けて、憲作さんはよく来るのですかと聞いた。
「ええ、よく來ます」
と朝永は答えた。
「これからは私も誘って」
「いいけど・・・」
「いいけど、何?」
「いや、別に、大抵は苑長と一緒だから」
「二人が良いわ」
「うん」
やはり聡子は恵里子の娘だった。
ママお酒で良いかしらと聞きながら朝永とメニューを覗いていた聡子が注文をする。
「翠ちゃん残念でしたね」
酒と料理を運んできた「女の子」が本人より残念そうに言った。
「この娘、翠ちゃんを応援しすぎて声が嗄れたんですよ」
「私だけじゃありません」
「まあ、それは有り難うございます」
恵里子が頭を下げる。
「いいえ、お礼を言うのはこちらなの、翠ママ、翠ちゃんや紅葉台の青少年の活躍を見てるとこちらがゲンキになるんですよ、声なんて嗄れてもかまわないのよ、歌手じゃないんですからね」
「そうよね、だけど翠ちゃんの得点を見たかったわ」
本当の女の子が話を引き継いだ。
「翠ちゃん何か言ってました、お姉ちゃん」
「お姉ちゃんは失礼ですよ」
「いいえ、いいんですよ、こずえさん、もうお姉ちゃんで通っているみたいだから」
「そのうち機長さんもお兄ちゃんと呼ばれるようになりますよ、ねっ!」
「あら、どうして?」
「お姉ちゃんがお嫁にいくのはちょっと寂しけど、お兄ちゃんが出来るのは嬉しいと翠ちゃんが言ってるから」
「あら、翠がそんなことを言ってるの?」
「これはマネージャーの久美さんからの情報です、こう見えても私たちは紅葉台ナデシコの熱烈サポーターなんですよ、この志織さんは喜楽ナデシコ会の副会長で〜す」
「まあ、ご苦労様です」
聞いていた恵里子が嬉しそうに礼を述べた、日本酒のせいで少し頬が赤らんでいる。


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新連載 [日記のような小説]

やがてみずきを背負って戻ってきた翠は
“みずきちゃんが眠いのね、だから、私も寝ます”
そいうと皆におやすみなさいといって合宿所へ行ってしまった。
「すっかりお姉ちゃんになって、手のかからない娘ね」
恵里子はこぼれるような笑みを湛えていた。
「ママ、翠に我侭を言わせてはダメよ」
「はい、わかっております、あなたは安心してお嫁に行きなさい」
「なんだか厄介払いみたい」
「そんなことはありませんよ、花嫁の母として涙をこらえるのが精一杯」
「ママは裁判に強いわけね」
「そろそろでかけようか」
耕平が立ち上がった。
聡子はテーブルを片づけると盆を持って返却口へ向った、そこに明美を見付け声を掛けた。
「美味しかったわ、ご馳走さま」
「お口に合いましたか?」
「ええ、花まる」
「半分は翠が作ったんですよ」
「味付けでわかった」
「そうですね」
明美はちょっと躊躇ってから、聡子を脇へ誘った。
「なあに」
「翠の事です」
「あの娘どうかしたの?」
「寂しがってます、本当は」
「わかってるつもりだけど・・・」
「お姉ちゃんと離れたことがないでしょう、だから、どうなるのか不安でしょうが無くて・・・」
「翠の力になってあげて、明美さん、何時かは経験しなければいけないことだもの、乗り越えて欲しいわ」
「私たちに出来るでしょうか?」
「友達なら出来るわよ、ね、いやまって、そうじゃないか、友達にしか出来ないかもよ」
「凄いプレッシャー」


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新連載 [日記のような小説]

聡子はこうしてもらうと何もかも忘れる事が出来た、絶対的な安心感とでも言のだろうか、深いところから泉が湧いてきてやがて全身がその清い水に浸されていくような気分になれた。
「パパのいう通りにする」
「それがいい」
「あら、聡子さん、お嫁さんになる人がパパに甘えてるの」
「パパはずっとパパ、ママは私のママでしょう、だからママにも甘えるわ」
「翠ちゃんが真似をしますよ」
「嫌なのママ?」
「ふふふ、甘えん坊さんは大歓迎、いつまでも甘えていて欲しいわ」
と言った恵里子は朝永に
「こんなあまえん坊さんで良いの、憲作さん?」
と聞いた。
朝永は返事をせずに笑顔を見せただけだった、代わりに翠が
「お姉ちゃん、お嫁に行くまではうんと甘えていていいですよ」
と言った。
「どういう意味?」
「へへへ」
「なに、そのへんな笑いは」
「なんでもありません」
「わかった、あなたパパとママを独り占めにするつもりね」
「末っ子ですからね」
「甘えるのはいいけど我侭はダメよ」
「わかっております、姉上様」
「これは約束じゃないよ、翠、私のお願い」
「わかった、お姉ちゃん」
翠はこっくりと頷いた。
「翠ちゃん! ミドリちゃん!
おしっこ」
こう叫びながらみずきが駈けてきたので姉妹の話はこれで中断された。
「たいへん、いそがなくちゃ」
翠はみずきを抱えるとトイレへ急いだ。


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新連載 [日記のような小説]

「朝永君!」
「はい」
耕平に声を掛けられると朝永は思わず緊張するらしい。
そんな朝永の脇を聡子がツツイテ笑った。
「この後、何か予定がある」
「いえ、別に」
「じゃあ、矢車のこずえさんに逢いに行くから付き合ってくれないか」
「はい、おともします」
「パパ、私は?」
「一緒においで」
「あのうるさいのが寝てからでしょう」
「そう」
そのうるさい翠は盆に沢山の皿を盛って恵里子と一緒に戻ってくるところだった。
「パパ、パパ、朝永さん、これを食べて見てください、ママも美味しいと感激、ねッ ママ」
「美味しいのよ」
「ママ、クリームは片づいたの?」
「へっへっ、お姉ちゃん、ちゃんと付けましたよ、大学に行く前に消えてもらわないとこまる」
「どうして大学に行く前なの?」
「アン・シャーリーの雀斑がそうだったからですよ、パパ美味しいですか?」
「うん、美味しい、これは傑作だよ」
「フフフ、よかった、お姉ちゃん、お式の準備は進んでいますか、私たちは着々ですよ」
「あなたのことはわかるけど、私たちって?」
「お姉ちゃんと朝永コーチのお式ですからね、サッカー部は全員参加にその他、自主参加多数ですよ」
「・・・・・・・・」
聡子は黙った。
はじめに朝永と描いていた小さで簡素な結婚式のイメージが恵里子の
“お式にはお招きいただけるんでしょうね、楽しみにしています”
とおっしゃる方が大勢いらして、ですからね失礼のないように皆さんお招きしましょうね。
この一言に始まり、今の翠の言葉で微塵に打ち砕かれて行ったからである。
ようやく気を取り直して聡子は
「式のことでパパに話したいことがあるの」
隣の耕平に言った。
「わかった」
と耕平は言ってから
「式のことはママと翠、それに祝ってくれる人達にませておきなさい、二人は神輿に乗っていればいい」
「でもいくらかかるか見当もつかなくなって・・・」
それには答えず耕平は聡子の頭を優しく撫でた。


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新連載 [日記のような小説]

佐藤が叫んだ時、翠の姿は無かった。
入ってくる聡子と朝永を見つけた翠は北風のように二人に迫っていた。
「お姉ちゃん!
いつ来たの?」
「今」
「もっと早くくれば試合が見れたのに」
「点を取らないフォワードの活躍をかしら」
「それを言わないで・・・」
「少しは気にしてるの?」
「ぜんぜん、今晩は朝永コーチ」
「今晩は、ご馳走になりに来たよ」
「沢山めし上がってくださいね」
「ありがとう」
「パパとママ達の処へどうぞ、料理はすぐに運びます」
料理を取りに行く翠の後ろ姿を見ながら聡子が言った。
「ほんとにあの娘、気にしていないみたいね」
「今日の試合には点を取ることとは別の課題があったのだろう、天皇杯となれば香苗君と翠ちゃんへのマークはこれまでとは比べ物にならないからね」
「ねえ、そのことママには云わないで」
「わかっている」
朝永が言った時、恵里子が声を掛けた。
「聡子さん、お式の準備はどうなっているの?」
「ぼつぼつ」
「そうね、それが良いわ、葉山のお部屋はそのままにしておいてね、いつでも帰ってこれるでしょう」
「ええ、まあ」
「ねえ、聡子さん、翠ちゃんのソバカス(雀斑)気にならなかった?」
「ちょっと薄くなったみたいだけど」
「そう、あなたもそう思う、よかったわ」
“そうだ、翠ちゃんクリーム付けたかしら、チョツト聞いて来ますね”
翠の事になると恵里子はキャリアウーマンでもなければ弁護士でもない、まして歌人でもなかった、ただの親馬鹿である。
「あの娘の雀斑は可愛いんだから気にすることもないのに」
聡子がつぶやいた。


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新連載 [日記のような小説]

メインはやはり焼き肉。
アルゼンチンの牧場のように盛大に、惜しげもなく、牛が焼かれた。
特製のタレが付いていて、実に美味い。
ジャガイモを三つ、人参一本、その他の野菜など決められた量の野菜を食べればお替わりが貰えた。
「こんなに野菜ばかり食べてたら兎になるぜ」
「君たちは肉の食べ過ぎ」
「食べ過ぎと言われるほどたべた記憶はないな」
「肉食獣は記憶力が悪いのよ」
「ネアンデルタールはそれで滅んだ」
「面倒くさい話は後にして肉くれ」
「ジャガイモが一つ残っていますよ」
「翠、優しい女の子になれ」
「私は優しくないの?」
「その焼きかけの肉で証明される、ここに乗せてくれ」
「あげちゃあダメだよ、翠、ジャガイモを食べなさい、佐藤君」
明美の声が響いた。
「なあ、明美、聞いてくれ、今夜はお別れ会だが、視点を変えれば天皇杯への出発でもあるわけだ」
「そうね」
「よし、そうなれば来年正月の国立に立つための永く、険しい闘いが始まるということだろう」
「そうね」
「その戦いを勝ち抜く為には何が必要だ」
「いろいろあるわ」
「いろいろあるが中でも一番大事なのは?」
「強靱な精神力」
「そりゃあ三蔵法師だ、おれたちには体力だ、体力だよ」
「それもあるわね」
「あるわねどころじゃない、まず第一だ、シュワルツネッガーも言っている、強靱な肉体に健全な精神が宿るとね」
「でも彼は共和党だぜ」
「共和党じゃいけないのか?」
「弱者に冷たく、戦争が好きだ」
「そりゃあ共和党に限らないよ、クリントンもイラク侵攻に賛成した、アメリカ人の一般的傾向だ」
「まあ、待て、話がそれた、俺が言いたいの体力の事だ」
「そのことなら、わたしの話しを聞いて」
明美は佐藤を制して話を続けた。
「ライオンは狩が下手なのを知っているでしょう、足が遅いから、でも速いからいいかというとそうもいかないのよ、ピューマは足が速いけどたびたび狩に失敗するの、何故だか分かる?」
「わかんない」
「肉ばかり食べているからよ」
「其処へ行くか」
「ライオンにしろピューマにしろ見た目はいいけど人生の3分の1は腹ぺこ、残りは睡眠と放浪」
「哀れな話だな」
「そうよ、肉食動物に未来はないの、種の保存が精一杯、それに比べて雑食生物は強く、繁栄しているじゃない」
「それと俺とどういう関係がある」
「だから、天皇杯の予選であっさり負けても良いの、どうせ私たちは進学してそれぞれの目標に向うわけでしょう、Jリーガーになる人はそこで頑張ればいいのよ、そのために肉を食べて少なくとも後20年ぐらいはあるだろう人生を棒に振ることはないのよ」
「何で棒に振るんだ」
「頭は悪くなる、身体は悪くなる、そこにどんな未来があるの?」
「少し大げさじゃないか」
「あなたには大げさじゃないの、肉を食べたければ野菜を食べなさい、それだけのことじゃない」
「わかった、食べる」
佐藤はジャガイモを頬張った、一気に食べるつもりらしい。
「もっと味わって食べなさい、作った人もジャガイモも気を悪くするでしょう」
佐藤は牛乳でかろうじてジャガイモを飲み込むと翠の前に皿をだした。
「その大きいやつをたのむ」
翠は一番小さな肉の塊を皿に乗せた。
「翠、おまえもか!」


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新連載 [日記のような小説]

紅葉台サッカー部は合宿が終わった日の夕食にお世話になった人々を招いて“またお会いしましょう、夕食会”を開く。
準備は部員全員で当たる。
別れは寂しいがこの日を楽しみにしている人も少くない。
秋山豊作夫妻もそうした人の一組みだった。
“秋山のおじいちゃん”
といって翠が何くれとなく親切にしてくれるのがこの頃の豊作には何物にも替え難い楽しみになっていたのである。
この夜も豊作夫婦の前には翠手作りの年寄の口に合う料理が並んでいた。
「このコンニャクの和物、美味しいですよ、おじいさん」
たくさんは食べない年寄にとって小鉢に種類の多いのが嬉しい。
ここではそうした配慮がなされている。
豊作の前には酒もあった。
喜楽酒造特製の清酒で豊作と言えどもなかなか手に入らない物だった、この夜のために館内が特別に配慮してくれたのである。
もっとも紅葉台のサッカー部は田植と稲刈りをしているからそれくらいの権利はあるといえばあったのだが・・・・酒に関心のない彼等にはあずかり知らぬことだった。
子供たちにはカレーが配られた。
“お母さんのカレーも美味しいけど、紅葉台のはもっと美味しい”
と子供たちが言い、母親を悩ませているカレーである。
喜楽主催の料理教室に通って腕には自信のある母親たちが首を傾げ
“みんなで食べるからよ“
“なでしこがいれば私たちでも美味しいでしょう“
ということで納得しているカレーである。
子供たちの上前をはねて食べて見るとやはり美味しい。
どことはっきりいえないが俗に言う
“一味違うのだ”
作り方を聞いても変わったところはなかった。
「でも、やっぱり美味しいわ」
それが共通の結論だった。


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新連載 [日記のような小説]

試合は紅葉台の完勝で終わった。
終了のホイッスルが鳴るのを待っていた子供たちがピッチに現れた、紅葉台の選手に向って殺到するということはなく運動会の入場のように一定の秩序とリズムを保っていた。
ベンチにいた1年生も加わって恒例の即席サッカー教室と交流会が開かれるのだ。
今日は菊池君とミゲル君に子供たちが集まった。
ドリブルとコーナーキックの実技が始まった、その一方で女の子たちの人気はやはりナデシコだった。
翠が座り込んだ周りに大きな輪が出来た。
背中には二三人の子どもが子亀のように張付いている。
そして、情況にかかわりなく思い出したようにやって来て翠のポーニーテールを引っ張って行く子どもがいた。
「今日はなんで点を取らなかったの、翠ちゃん」
「頑張ったんですよ、でも、菊池君はかっこよかったでしょう」
「うん、でも、翠ちゃんがとってほしい」
「こんどはとる?」
「頑張ります」
「そうしたら、たくさんとってね」
「まかしてください、3年生になりますからね」
「わたし一年生になるよ」
「まあ、よかったね」
「わたしねんちょうさん、この子は保育園に行くんだよ」
「そう、じゃあ、たくさんご飯をたべましょうね」
「なんでごはんをたべるの?」
「元気になりますよ」
「ゲンキになったらどうなるの?」
「こにはお花が一杯咲いていますね」
「さいてる」
「そのお花がもっとキレイに見えますよ」
「ほんとう!」
「はい、ほんとですよ、それにね」
「それに」
「鳥さんたちの声がよく聞こえますよ」
「翠ちゃんにはきこえる」
「聞こえますよ、そうすると胸がわくわくして楽しくなって、歌をうたいたくなりますよ」
「うたはすき」
「そうね、たのしいね」
「歌つて、翠ちゃん」
翠の輪が歌をうたい、となりの明美の輪は相撲、香苗の輪はお絵書きをやっていた。
そんなところへ二年生の今宮華絵がマネージャ久美からの通達
“ソロソロ終わりにしないと夕食の仕度に間に合わない”
とふれて廻った。
「翠ちゃん、あした帰るの?」
「がっこうがはじまりますからね」
「こんどはいつくるの?」
「五月、田植えに来ますから、また逢いましょうね」
「ねえ、ねえ、紅葉台のご飯たべにいっていい?」
「いいですよ、おいでなさい、たくさん食べてね」


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新連載 [日記のような小説]

インターバルの時間にどんな話し合いが行れたのか知る由もないが、J2の選手の動きから想像は出来た。
激しいチェック、果敢な攻撃、厳しいマークが翠と香苗に付いた。
それは寄ってたかってと言うのが相応しかった。
だがそれは翠と香苗の運動能力の高さを証明することにもなった。
スライディングタックルも、激しい当りも彼女たちはしなやかに躱した。
そして、ディフェンダーを右に左に翻弄する姿はまるで蝶を追いかける子どもと蝶のようであった。
二人が左右にポジションを替えている間に出来た隙間にミゲルと明美が入る、紅葉台のパスの正確さには定評がある。
そのパスがミゲルに通った。
翠がゴールへ迫る。
ディフェンダーが翠を囲む。
ミゲルはドリブルで前へ。
香苗の前にもパスコースがない、だがミゲルは前線へパス。
そこへ駆け込んだのは明美だった。
迷わずシュート。
後半五分、紅葉台は追加点をあげた。
紅葉台にとっては予定の行動だがJ2にチームはど胆を抜かれた。
「どうなっているんだ?」
こんな疑問にイレブンが支配されプレーが乱れた。
紅葉台の攻撃パターンが掴めなくなった、フォワードに付けば、疎の隙を突かれて別のところから攻撃される、攻撃の起点が掴めないうちにJ2の選手はいたずらにピッチを走り回り、疲れ果てた。
二点のリードがあるから紅葉台は無理な攻撃をしない、点を取りに行かなければならないJ2が引いている。
だからといって紅葉台は無駄なパス回しで時間を稼ぐこともしない、隙あらば、の、その隙を狙っていた。
右ウイングの佐々木が果敢にドリブルで上がる、ミゲル、明美にパスを出す、誰もがそう思った瞬間、パスは菊池に出た。
左から上がっていたのだ。
菊池はそのままゴールに迫った。
明美、香苗、翠がアシストに入る、つまり、菊池のパスコースの確保の為、相手ディフェンダーを引きつける役を果たしたのだ。
菊池のゴールが決まった。
未知の怪獣のような咆哮を発しながら、猛然と駆け込んできた佐藤の腰払いで倒された菊池は手荒い祝福を受けた。
人間の山の中からわずかに覗いた菊池の顏をゴローが舐めている。
やっと、解放されて立ち上がった菊池の頭に突いた芝やユニホームの泥を翠が払っている。
公園でよく見かける光景がピッチのうえに現れた。
「翠ちゃんは親切だね」
「菊池君とは一緒に暮らしてるからだよ」
「えっ! 同棲してるの?」
「一緒にいるだけ」
「・・・・・・・」
「それにしても紅葉台は強いね」
「J2が弱過ぎるんじゃないか」
「両方かも」
「こうなると後は翠ちゃんのゴールを見るだけだね」
「明美さんのも観たい」
「僕はゴローと遊びたな」
スタンドでは他にいろいろな話しが交わされていただろうがどんな話かそれは分からない。
ピッチでは綺麗になった菊池が暖かい拍手と声援のなかを自分のポジションへ戻って行った。
翠が小さく手を振っている。
スタンドの期待は一部実現し、一部は実現しなかった。
J2の意地から必死の反撃にでた相手に紅葉台は明美のコーナーキックからミゲルがへディングを決め一点をあげて終了した。
紅葉台の都筑には手応えのある結果だったがJ2の東監督にはJ1昇格が遠のき、一からの出直をせざるを得なくなったがあとになって考えて見ればこれがJ2にとって良い結果を生むことになったのである。


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